カードが並ぶ確率


ランダムにシャッフルした1組のカードの中で,ペア(数字が同じ)カードが隣接している可能性について調べたメモ.数式でやろうとしたら酷い目に合いそうだったので,計算機の力を借りた.

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「インスクリュータブル」という Joseph Barry 氏のマジックレクチャーDVDがある.レッド,ブルー,グリーンの三巻が発表されているが,どのトリックもそれ単体で演じるだけでなく,少しのアレンジと他の演技との組み合わせができ,まるでアイデア集も兼ねているようだと,私が気に入っている作品の1つである.inscrutable――不可解な,探索不可能な,という意味で,マジックにある程度親しんだ人のほうが騙されるかもしれない,と感じるようなトリックも多い.その理由として,完全なタネではなく,自然現象に任せて臨機応変に対応する,といった姿勢がみられるのである.

さて,第三巻「グリーン」のなかには,

観客にシャッフルさせた1組のカードの中から,ペアが隣接しているものを探す

といった手順が含まれる.ここで,ペアとは数字が同じカードを指す.解説で Joseph 氏は「ペアがまったく見つからなければどうにかして作ればいいが,大概ペアがみつかるのだ」といっていたが(これが果たしてトリックの解説として適切かどうかは議論しないとして),実際どの程度の確率でペアがみつかるのかを調べておかなければ,実際に演じる場面で余計な思考をすることになりそうだ.調べてみよう.

 

ペアカードが見つかる確率

数字が同じカードが隣同士になる確率を調べるが,そのマークは一切関係がないので,1組のカードの中には,同じ数字の4枚組のカードが13セットあると考える.つまり,選び方の総数は

    \[ \frac{52!}{(4!)^{13}} \]

・・・端的にいってやりたくない.こんなときにはプログラムでおおまかな数字を叩き出すに限る.とはいっても Python で 52! のような大きな数字を計算することは厳しいから,配列をランダムに並べ替えることをカードのシャッフルにみたてて,ペアができているかをシミュレートしてみることにした.10000回×10セットほどやってみれば,そこそこの精度で確率を推定することができるはずだ.

配列にカードのタプル (H,2) などを入れてもペアカードを捜索できるだろうが(この場合は第2成分が一致すればよい),より端的にするために,余りによる分類を使う.例えば 0 から 51 までの数字を並べたとき,13 で割った余りが一致するものを「同じ数字のカード」とみなせば,4つずつ13種類の分類が可能である.

では早速,

    \[ {\rm pair\_test}(52,13,10000) \]

を10回実行してみると

95.77
95.62
95.65
95.13
95.81
95.22
95.82
95.28
95.68
95.05

 

このような結果に.確かに100%近くペアが見つかるようだ.実際,知人のマジシャンとともに実験してみたが,20回すべてでペアが見つかった.

 

 

メイトカードが見つかる確率

マークの色と数字が一致する2枚のカードをメイトカードという.たとえば,\heartsuit A\diamondsuit A\clubsuit 8\spadesuit 8 のような組である.これらが見つかる可能性はどれほどだろうか.これは先ほどのプログラムで

    \[ {\rm pair\_test}(52,26,10000) \]

とすればよい.黒赤13種類ずつ,計26種類をシャッフルすると考えれば明らかだ.10回実行すると

63.88
63.56
63.55
63.2
63.16
64.44
63.26
64.01
64.37
64.45

 

このようになった.60%を超えるというのは個人的には意外な結果.あまりに気になったので実際にやってみると,20回中で12回,メイトカードが見つかった.これだけの確率があるなら,Sandwich Card のようなトリックに利用できるかもしれない.

 

 

補足

今回はプログラムのコード中で「Decimal」を用いなかったが,プログラムの性質上,k = 10000 のときに最大5桁分までしか値が出ないため(5桁 = すべて成功はほぼありえないが一応ありうる)「float」で十分と判断した.

今回は「2枚組を見つける」ことを前提にコードを書いたため,「3枚組」や「4枚組(Four of a kind)」について調べるためには少し改変が必要である.また,すべての種類のカードが平均的に含まれることを想定しているため,JOKER を加えての検証をするなら,やはりこのまま適用することはできない(メイトカードの検証なら可能である).


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