大学数学

行列の上三角化

$n$ 次実正方行列 $A$ の各固有値の重複度と,対応する固有空間の次元が一致するとき(あるいは $A$ が $n$ 個の1次独立な固有ベクトルをもつとき),$A$ は対角化可能(diagonalizable)である.一方,$A$ が対角化可能でないときでも,$A$ を上三角化(triangular)することができる.すなわち

\[
P^{-1}AP = \left[
\begin{array}{ccccc}
\lambda_1 & & & & \\
&\lambda_2 & & \ast &\\
& & \ddots & \\
& 0 & & \ddots & \\
& & & & \lambda_n
\end{array}
\right]
\]

なる正則行列 $P$ が存在する.ここで $\lambda_i~~(i = 1,2,\ldots ,n)$ は $A$ の固有値.

この $P$ が存在することを証明したものはよく見かけるが,実際に計算した例を見ることは少ない気がする.難しいことは考えずにとりあえず Jordan 標準形を構成してしまえば,それが上三角化行列になるからだろうか.

今回は正則行列 $P$ によって Jordan 標準形ではない上三角行列を構成する必要がある場合のための計算メモ.
$P$ が存在することの証明はせず,途中の計算も大幅に省略した.時間があればいずれ追記するかもしれない.なお,さらに強い条件として $P$ を直交(ユニタリ)行列にすることもできる(Schur分解).

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人口予測のモデル#2

前回の記事では Malthus による人口予測のモデルを扱った.前回のモデルには多くの問題点があったが,そのなかの一つ,人口が限りなく増加してしまうという点について,1837年にオランダの生物学者 Verhulst(フェルフルスト)が 人口過密 を考慮に入れた修正を提案した.

Model 2.1(Verhulst の人口モデル)
時刻 $t$ におけるある国の総人口 $N = N(t)$ は,時刻 $t=0$ における人口 $N_0$ と定数 $\gamma , M$ を用いて
\[
N = \frac{M}{1 + \left(\frac{M}{N_0}-1\right)e^{-\gamma t}}
\]
と表されると予測できる.

 

今回はこのモデルについてのメモ.
 
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人口予測のモデル#1

英国の経済学者 Malthus(マルサス)は,1798 年出版の「人口論」において,次のようなアイデアを提案した.

Model 1.1(Malthus の人口モデル)

時刻 $t$ におけるある国の総人口 $N = N(t)$ は,時刻 $t=0$ における人口 $N_0$ と定数 $\gamma$ を用いて
\[
N = N_0e^{\gamma t}
\]
と表されると予測できる.

 

もちろん実際の人口はここまで単純な数式で完全に表現することはできないだろうが,微分方程式と数学モデル,という意味では良い例だと考えられる.今回はこのモデルについてのメモ.

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n項間の漸化式#1

$n$ 項間漸化式から数列の一般項を求める問題を考える.

$2$ 項間,$3$ 項間の漸化式の解法はよく知られているが,今回は線形代数(大学数学)を用いて

\[
a_{n+3} = p a_{n+2} + q a_{n+1} + r a_n + s \tag{$\diamondsuit$}
\]

の形の $4$ 項間漸化式を満たす数列 $\{a_n\}$ の一般項を求める.

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