数学

Stirlingの公式(スターリング――)

Stirling の公式(Stirling の近似)は,$n!$ の値を近似する公式である.近似の精度に応じていくつかの種類があるが,今回はその一つ,
\[
n! \sim \sqrt{2\pi n}\left(\frac{n}{e}\right)^n
\]
についてのメモ.

なお,今回の内容は 大阪大学 数学科 挑戦枠 の2015入試の問題 を改題したものを利用している.

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行列の上三角化

$n$ 次実正方行列 $A$ の各固有値の重複度と,対応する固有空間の次元が一致するとき(あるいは $A$ が $n$ 個の1次独立な固有ベクトルをもつとき),$A$ は対角化可能(diagonalizable)である.一方,$A$ が対角化可能でないときでも,$A$ を上三角化(triangular)することができる.すなわち
\[
P^{-1}AP = \left[
\begin{array}{ccccc}
\lambda_1&&&&\\
&\lambda_2&&*&\\
&&\ddots&\\
&0&&\ddots&\\
&&&&\lambda_n
\end{array}
\right]
\]

なる正則行列 $P$ が存在する.ここで $\lambda_i~~(i = 1,2,\ldots ,n)$ は $A$ の固有値.

この $P$ が存在することを証明したものはよく見かけるが,実際に計算した例を見ることは少ない.理由は簡単で,難しいことは考えずにとりあえず Jordan 標準形を構成してしまえば,それは上三角行列にほかならないからである.

今回はもし,なんらかの理由で正則行列 $P$ によって Jordan 標準形ではない上三角行列を構成する必要がある場合のための計算メモ.なお,$P$ は正則行列というだけではなく,直交行列まで制限することができるが,今回はやらない.

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人口予測のモデル#2

前回の記事では Malthus による人口予測のモデルを扱った.前回のモデルには多くの問題点があったが,そのなかの一つ,人口が限りなく増加してしまうという点について,1837年にオランダの生物学者 Verhulst(フェルフルスト)が 人口過密 を考慮に入れた修正を提案した.

Model 2.1(Verhulst の人口モデル)
時刻 $t$ におけるある国の総人口 $N = N(t)$ は,時刻 $t=0$ における人口 $N_0$ と定数 $\gamma , M$ を用いて
\[
N = \frac{M}{1 + \left(\frac{M}{N_0}-1\right)e^{-\gamma t}}
\]
と表されると予測できる.

 

今回はこのモデルについてのメモ.
 
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人口予測のモデル#1

英国の経済学者 Malthus(マルサス)は,1798 年出版の「人口論」において,次のようなアイデアを提案した.

Model 1.1(Malthus の人口モデル)

時刻 $t$ におけるある国の総人口 $N = N(t)$ は,時刻 $t=0$ における人口 $N_0$ と定数 $\gamma$ を用いて
\[
N = N_0e^{\gamma t}
\]
と表されると予測できる.

 

もちろん実際の人口はここまで単純な数式で完全に表現することはできないだろうが,微分方程式と数学モデル,という意味では良い例だと考えられる.今回はこのモデルについてのメモ.

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Maclaurin展開#2 対数関数

自然対数関数 $\log{(1+x)}$ は $-1 < x \leqq 1 $ において
\[
\log{(1+x)} = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^{n-1}}{n}x^n
\]
の形で表すことができる.これが $\log{(1+x)}$ の Maclaurin(マクローリン)展開(もしくは $x=0$ の周りでの Taylor(テイラー)展開)である.高校数学の範囲で $x \geqq 0$ の範囲 について示してみる.また,その結果を利用して, Mercator 級数(メルカトル――)
\[
\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^{n-1}}{n} = 1-\frac{1}{2} + \frac{1}{3}-\frac{1}{4} + \cdots
\]
の値を求める.

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Basel問題(バーゼル――)

Basel 問題は 自然数の平方数の逆数すべての和
\[
\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2} = \frac{1}{1^2} + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{3^2} + \cdots
\]
を求める問題である.この級数の和が $\pi^2/6$ に収束することを,高校数学の範囲で示す方法についてのメモ.

なお,今回の手法については 日本女子大学 理学部 数学科 の2003推薦入試の問題 を改題したものを利用している.

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Gamma 関数(ガンマ――)


階乗(!)の一般化として用いられる Gamma 関数

\[
\Gamma (x) = \lim_{\scriptstyle R \to \infty \atop \scriptstyle r \to +0} \int_{r}^{R} t^{x-1}e^{-t}\,dt~~~~~(x > 0)
\]
についてのメモ.Gamma 関数は定義域を実部が正である複素数全体まで拡張することができるが,実数に制限したものについてまとめたメモ.以前のGauss 積分の記事の結果を用いる場面がある.

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極限メモ#3(x^x の極限)

今回は次の3つの極限

\[
\lim_{x \to \infty}\frac{\log{x}}{x}~, \quad \lim_{x \to +0} x\log{x}~, \quad \lim_{x \to +0} x^x
\]

について考える.はじめの2つの極限は既知としてよい(必要に応じて用いてよい)とされていることも多いが,今回はあえて高校数学の範囲で納得できるような証明を与えてみる.もしかしたら循環論法になってしまっている箇所もあるかもしれないが,見つけたときはコメント・Twitter などで意見を貰えればありがたい.

なお,$x \to +0$ は $ x $ を 0 より大きい値から近づけていくことを表す.人によっては $x \downarrow 0$ などと表記することもあるようだが,私の場合は $x \to +0$ の記法を用いることにする.恒例の誘導問題つき記事である.

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