Gauss積分


Gauss積分は確率論や統計学の正規分布に現れる,指数関数 $e^{-x^2}$ に関する(広義)積分である.今回はGauss積分の計算を高校数学レベルで導出する方法についてのメモ.導出にはWallis積分を用いる.

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Gauss積分の定義

\[
\lim_{R \to \infty}\int_{0}^{R} e^{-x^2}\,dx
\]

をGauss積分という.今回の目標は,この積分の値を求めることである(Theorem 3).

Gauss積分の計算

計算の方針と概略

  • $e^{-x^2}$ に関する不等式を導出
  • Gauss積分とWallis積分の関係式を導出
  • Wallisの公式を用いてGauss積分の値を求める

導出

 
Lemma 1

$x \geqq 0$ において,次の不等式が成り立つ:
\[
1-x^2 \leqq e^{-x^2} \leqq \frac{1}{1+x^2}
\]

 
証明(click)

\[
f(x) = e^{-x^2}-(1-x^2), \qquad g(x) = e^{x^2}-(1 + x^2)
\]
とおく.
\[
f'(x) = 2x(1-e^{-x^2}) = \frac{2x(e^{x^2}-1)}{e^{x^2}}
\]
であるから,$f'(x) = 0$ となるのは $x = 0$ のときのみである.増減を調べると $x \geqq 0$ のとき $f(x)$ は単調に増加するから
\[
f(x) \geqq f(0) = 0 \qquad (x \geqq 0)
\]
である.ゆえに
\[
1-x^2 \leqq e^{-x^2}
\]
が成り立つ.$g(x)$ についても同様にして
\[
g(x) \geqq g(0) = 0 \qquad (x \geqq 0)
\]
であるから
\[
e^{x^2} \geqq 1+x^2
\]
両辺ともに正値をとることに注意して逆数をとれば
\[
e^{-x^2} = \frac{1}{e^{x^2}} \leqq \frac{1}{1+x^2}
\]
が成り立つ.

 
Lemma 2

$I_m$ を Wallis 積分 とする:
\[
I_m = \int_{0}^{\pi/2} \sin^m{t}\,dt = \int_{0}^{\pi/2} \cos^m{t}\,dt.
\]
このとき,$n = 1,2,\ldots$ に対して,次の不等式が成り立つ.
\[
I_{2n+1} \leqq \lim_{R \to \infty} \int_{0}^{R} e^{-nx^2} \,dx \leqq I_{2n-2}
\]

 
証明(click)

1つ目の不等号を示す.$R \to \infty$ のときを考えるから,$R > 1$ としてよい.また
\[
\frac{d}{dt}\int_{0}^{t} e^{-nx^2}\,dx = e^{-nt^2} > 0
\]
であるから,この積分は $t$ の関数として単調増加で,さらに $t > 0$ では必ず正値をとる.ゆえに
\[
\int_{0}^{1} e^{-nx^2}\,dx \leqq \int_{0}^{1} e^{-nx^2}\,dx + \int_{1}^{R} e^{-nx^2}\,dx = \int_{0}^{R} e^{-nx^2}\,dx \leqq \lim_{R \to \infty} \int_{0}^{R} e^{-nx^2}\,dx
\]
である.Lemma 1より
\[
1-x^2 \leqq e^{-x^2} \quad (x > 0)
\]
であったが,$0 \leqq x \leqq 1$ においては $1-x^2 \leqq 0$ であるから,$n = 1,2,\ldots$ に対して
\[
(1-x^2)^n \leqq \left(e^{-x^2}\right)^n = e^{-nx^2}
\]
が成り立つ.ここで,$x = \sin{t}$ の変数変換と $\cos^2{x} = 1-\sin^2{x}$ を用いれば
\[
\int_{0}^{1} (1-x^2)^n \,dx = \int_{0}^{\pi/2} (1-\sin^2{x})^n \cdot \cos{t} \,dt = \int_{0}^{\pi/2} \cos^{2n+1}{t}\,dt = I_{2n+1}
\]
であるから
\[
I_{2n+1} = \int_{0}^{1} (1-x^2)^n \,dx \leqq \int_{0}^{1}e^{-nx^2}\,dx \leqq \lim_{R \to \infty} \int_{0}^{R} e^{-nx^2}\,dx
\]
を得る. $2$ つ目の不等号を示す.Lemma 1より
\[
e^{-x^2} \leqq \frac{1}{1+x^2} \quad (x \geqq 0)
\]
であったが,$x$ の値に関わらず $e^{-x^2} > 0$ であるから,$n = 1,2,\ldots$ に対して
\[
e^{-nx^2} = \left(e^{-x^2}\right)^n \leqq \left(\frac{1}{1+x^2}\right)^n = \frac{1}{(1+x^2)^n}
\]
が成り立つ.ここで,$x = \tan{t}$ の変数変換を考える.積分区間に $x = 0$ が含まれているから, $\tan{t}$ が連続になるよう, $t$ の定義域は $-\pi/2 < t < \pi/2$ で考える.$x=R$ に対応するような $t$ の値を $\alpha$ とおく.すなわち $R = \tan{\alpha}$ である.$R$ の値が限りなく大きくなるとき,$\alpha$ の値は $\pi/2$ へ増加しつつ近づく.したがって
$$
\begin{eqnarray*}
\lim_{R \to \infty}\int_{0}^{R} \frac{dx}{(1+x^2)^n}
& = & \lim_{\alpha \to \pi/2-0}\int_{0}^{\alpha} \frac{1}{(1 + \tan^2{t})^n}\cdot\frac{1}{\cos^2{t}}\,dt \\
& = & \int_{0}^{\pi/2}\cos^{2n-2}{t}\,dt \\
& = & I_{2n-2}
\end{eqnarray*}
$$
を得る.ここで $2$ つ目の等号では $\displaystyle 1 + \tan^2{t} = \frac{1}{\cos^2{t}}$ を用いた.

 
補足(click)

Wallisの公式の利用を考えたために
\[
\lim_{R \to \infty} \int_{0}^{R} e^{-nx^2} \,dx \leqq I_{2n-2}
\]
を示しているが,上からの評価についてはより具体的なものがすぐに導出できる.Lemma 1 より
\[
e^{-x^2} \leqq \frac{1}{1+x^2} \quad (x \geqq 0)
\]
であったが,$x = \sqrt{n}t~(> 0)$ とすれば
\[
e^{-nt^2} \leqq \frac{1}{1+nt^2} = \frac{1}{n}\cdot \frac{1}{\frac{1}{n} + t^2}
\]
である.変数変換 $\displaystyle t = \sqrt{\frac{1}{n}}\tan{\theta}$ を用いれば
\[
\int_{0}^{\infty}\frac{1}{n}\cdot \frac{1}{\frac{1}{n} + t^2}\,dt = \int_{0}^{\pi/2} \sqrt{\frac{1}{n}}\,d\theta = \frac{\pi}{2\sqrt{n}}
\]
を得る.この結果を用いても次のTheorem 3を示すことができる.

 
Theorem 3(Gauss 積分)

\[
\lim_{R \to \infty}\int_{0}^{R} e^{-x^2}\,dx = \frac{\sqrt{\pi}}{2}.
\]

 
証明(click)

Wallisの公式より
$$
\begin{eqnarray*}
\lim_{n \to \infty}\sqrt{n}I_{2n+1}
& = & \lim_{n \to \infty} \sqrt{2n+1}I_{2n+1} \cdot \frac{\sqrt{n}}{\sqrt{2n+1}} \\
& = & \lim_{m \to \infty} \sqrt{m}I_m \cdot \sqrt{\frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{m}\right)} \\
& = & \frac{\sqrt{\pi}}{2}
\end{eqnarray*}
$$
が成り立つ.ここで $2$ つ目の等号では $m = 2n+1$ とおいた.同様にして
\[
\lim_{n \to \infty}\sqrt{n}I_{2n-2} = \frac{\sqrt{\pi}}{2}
\]
が成り立つことも判る.また,変数変換 $\displaystyle t = \frac{x}{\sqrt{n}}$ を用いると
\[
\int_{0}^{r}e^{-nt^2}\,dt = \frac{1}{\sqrt{n}} \int_{0}^{\sqrt{n}r} e^{-x^2}\,dx
\]
を得る.$\sqrt{n} > 0$ であるから $r \to \infty$ のとき $\sqrt{n}r \to \infty$ となる.したがって $R = \sqrt{n}r$ とおけば
\[
\lim_{r \to \infty} \int_{0}^{r} e^{-nt^2}\,dt = \lim_{R \to \infty} \frac{1}{\sqrt{n}} \int_{0}^{R} e^{-x^2}\,dx
\]
であるが,これと Lemma 2 より
\[
\sqrt{n}I_{2n+1} \leqq \lim_{R \to \infty} \int_{0}^{R} e^{-x^2} \,dx \leqq \sqrt{n}I_{2n-2}
\]
が成り立つ.$n \to \infty$ の極限を考えれば,はさみうちの原理より
\[
\lim_{R \to \infty}\int_{0}^{R} e^{-x^2}\,dx = \frac{\sqrt{\pi}}{2}
\]
が示された.

 
補足(click)

関数 $e^{-x^2}$ は連続な偶関数であるから,$L, \, R > 0$ に対して
\[
\int_{-L}^{R}e^{-x^2}\,dx = \int_{-L}^{0}e^{-x^2}\,dx + \int_{0}^{R}e^{-x^2}\,dx = \int_{0}^{L}e^{-x^2}\,dx + \int_{0}^{R}e^{-x^2}\,dx
\]
が成り立つ.したがって
\[
\lim_{L, \, R \to \infty} \int_{-L}^{R} e^{-x^2}\,dx = \sqrt{\pi}
\]
である.

 

20190519 更新


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