三角形の重心・外心・内心・垂心の位置ベクトル


空間内の三角形 ABC の各頂点の位置ベクトルを用いて,三角形の重心,外心,内心,垂心の位置ベクトルを表現することを考える.

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導出には以下のノートの結果を利用する:

記号のルール

  • ABC の面積を SABC と表すことにする
  • CAB=AABC=BBCA=C と表現する
  • BC=aCA=bAB=c と表現する

重心の位置ベクトル

ABC および重心 G に対して
OG=OA+OB+OC3 が成り立つ.

証明(click)

直線 AG と直線 BC の交点を D とする.

重心の性質より AG:GD=2:1 であるから
SGBC=13SABC である.SGCA および SGAB も同様であるから
α:β:γ=SGBC:SGCA:SGAB=1:1:1 を得る.したがって
OG=OA+OB+OC3 である.

外心の位置ベクトル

ABC および外心 Q に対して
OQ=(sin2A)OA+(sin2B)OB+(sin2C)OCsin2A+sin2B+sin2C が成り立つ.

鋭角三角形の場合の証明(click)

ABC が鋭角三角形の場合,すなわち外心 QABC の内部にある場合を考える.外接円の半径を R とおく.

外心の性質より QB=QC=R である.また,円周角の定理より BQC=2A である.したがって
SQBC=12R2sin2A が成り立つ.同様にして
SQCA=12R2sin2B,SQAB=12R2sin2C が成り立つから
α:β:γ=SQBC:SQCA:SQAB=sin2A:sin2B:sin2C を得る.したがって
OQ=(sin2A)OA+(sin2B)OB+(sin2C)OCsin2A+sin2B+sin2C である.

鈍角三角形の場合の証明(click)

ABC が鈍角三角形の場合,すなわち外心 QABC の外部にある場合を考える.ABC の外接円と直線 AQ の交点のうち,点 A でないものを A とする.

円に内接する四角形の性質より BAC=πA であるから
sin(2BAC)=sin(2π2A)=sin2A が成り立つ.また ABA=ACA=π/2 より
sin(2CBA)=sin(π2B)=sin2B,sin(2BCA)=sin(π2C)=sin2C が成り立つから,ABC とその内部の外心 Q に対する位置ベクトルは
OQ=(sin(2BAC))OA+(sin(2CBA))OB+(sin(2BCA))OCsin(2BAC)+sin(2CBA)+sin(2BCA)=(sin2A)OA+(sin2B)OB+(sin2C)OCsin2A+sin2B+sin2C を満たす.ここで
OA=OA+2AQ=OA+2OQ2OA=OA+2OQ であるから,これを用いて整理すると
OQ=(sin2A)OA+(sin2B)OB+(sin2C)OCsin2A+sin2B+sin2C が得られる.

内心の位置ベクトル

ABC および内心 I に対して
OI=aOA+bOB+cOCa+b+c が成り立つ.

証明(click)

内接円の半径を r とおく.

内心の性質より,点 I から各辺に下した垂線の長さは r であるから
SIBC=12ar が成り立つ.同様にして
SICA=12br,SIAB=12cr が成り立つから
α:β:γ=SIBC:SICA:SIAB=a:b:c を得る.したがって
OI=aOA+bOB+cOCa+b+c である.

垂心の位置ベクトル

ABC および垂心 H に対して
OH=(tanA)OA+(tanB)OB+(tanC)OCtanA+tanB+tanC が成り立つ.

鋭角三角形の場合の証明(click)

ABC が鋭角三角形の場合,すなわち垂心 HABC の内部にある場合を考える.直線 AH と直線 BC の交点を D とする.

垂心の性質より ABD および ACD は直角三角形であるから
tanB=ADBD,tanC=ADDC である.したがって
BD:DC=ADtanB:ADtanC=tanC:tanB が成り立つから
SHAB:SHCA=12AHBD:12AHDC=BD:DC=tanC:tanB である.同様にして SHBC について考えれば
α:β:γ=SHBC:SHCA:SHAB=tanA:tanB:tanC を得る.したがって
OH=(tanA)OA+(tanB)OB+(tanC)OCtanA+tanB+tanC である.

鈍角三角形の場合の証明(click)

ABC が鈍角三角形の場合,すなわち垂心 HABC の外部にある場合を考える.ここで,A+B+C=π であるから,正接の加法定理より
tanA=tan(π(B+C))=tan(B+C)=tanB+tanCtanBtanC1 が成り立つので
tanAtanBtanC=tanA+tanB+tanC であることに注意する.いま,垂心の性質から点 A は鋭角三角形 HBC の垂心である.

tan(HBC)=tan(π2C)=1tanC,tan(HCB)=tan(π2B)=1tanB, である.また,直線 HB と直線 CA の 交点を N,直線 HC と直線 BA の 交点を M とすると,四角形 AMHN が同一円周上にあることから
tan(BHC)=tan(πNAM)=tan(NAM)=tanA が成り立つので,HBC とその内部の垂心 A の位置ベクトルは
OA=(tanA)OA+(1tanC)OB+(1tanB)OCtanA+1tanC+1tanB=(tanAtanBtanC)OA+(tanB)OB+(tanC)OCtanAtanBtanC+tanB+tanC=(tanAtanBtanC)OA+(tanB)OB+(tanC)OCtanA これを OH について整理すれば
OH=(tanA)OA+(tanB)OB+(tanC)OCtanA+tanB+tanC を得る.

直角三角形の場合の補足(click)

直角三角形のとき,垂心は直角の頂点と一致する.例えば A=π/2 のとき,垂心は点 A と一致するが,このとき tanA は定義されない.一方,tanθ=sinθ/cosθ を利用して
OH=(sinAcosBcosC)OA+(sinBcosCcosA)OB+(sinCcosAcosB)OCsinAcosBcosC+sinBcosCcosA+sinCcosAcosB と表現すれば,sin(π/2)=1cos(π/2)=0 であるから
OH=(cosBcosC)OAcosBcosC=OA となる.したがって,この式は直角三角形の場合も成立していると考えることができる.


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