代数学

行列の上三角化

n 次実正方行列 A の各固有値の重複度と,対応する固有空間の次元が一致するとき(あるいは An 個の1次独立な固有ベクトルをもつとき),A は対角化可能(diagonalizable)である.一方,A が対角化可能でないときでも,A を上三角化(triangular)することができる.すなわち

P1AP=[λ1λ20λn]

なる正則行列 P が存在する.ここで λi  (i=1,2,,n)A の固有値.

この P が存在することを証明したものはよく見かけるが,実際に計算した例を見ることは少ない気がする.難しいことは考えずにとりあえず Jordan 標準形を構成してしまえば,それが上三角化行列になるからだろうか.

今回は正則行列 P によって(Jordan 標準形を前提とせずに)上三角行列を構成するための手順をまとめた.
P が存在することの証明はせず,途中の計算も大幅に省略した.なお,さらに強い条件として P を直交(ユニタリ)行列にすることもできる(Schur分解).

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